高橋留美子の人気漫画『らんま1/2』が新垣結衣主演で実写化される。12月に日本テレビ系「金曜スーパープライム」枠のスペシャルドラマとして放送される。実写化が難しい往年の人気漫画のドラマ化に原作ファンの期待と不安が交錯する。
『らんま1/2』は1987年から96年まで『週刊少年サンデー』に連載され、アニメ化もされた。水をかぶると女性になってしまう高校生格闘家・早乙女乱馬を主人公とするドタバタ劇あり、格闘あり、恋愛あり、学園生活ありの盛りだくさんの漫画である。常人離れした格闘や、水をかぶることで異性やパンダやブタ、アヒルになるという超自然的現象実写化には課題がある作品でもある。日本テレビは実写化困難と見られた『怪物くん』もドラマ化しており、原作ファンをうならせる手腕への期待は大きい。
水をかぶると女性になる乱馬は賀来賢人(男性時)と夏菜(女性時)が演じる。『らんま1/2』は女性になった乱馬が無自覚に見せる健康的な色気ショットが満載である。この実写化は難しいものの、映画『GANTZ』で全裸での撮影をした夏菜の体を張った演技に注目である。
乱馬の許嫁の天道あかね役が新垣結衣で、ドラマでは天道あかねを主人公としたオリジナルストーリーになっている。『らんま1/2』が大好きと語る新垣は大いに乗り気であるが、あかねの男勝りの格闘少女と新垣の美少女イメージにはギャップがある。
あかねは乱馬からは「ずん胴」「色気がない」と言われ、料理や裁縫が下手という女性的魅力に欠ける設定である。キャストが新垣では、「ずん胴」「色気がない」と言われても全く説得力がなくなってしまう。他方で、あかねは九能帯刀や響良牙からは惚れられ、主人公の乱馬とも相思相愛のツンデレ関係にあるモテキャラである。連続ドラマ初主演となったフジテレビの月9ドラマ『全開ガール』で私生活では赤ジャージ着用という「イケてない」女性を演じた新垣の新たな一面に着目したい。
この若葉は外面では「イケてる」女性を目指し、自らの高収入と金持ちとの結婚を望んでいた。このキャラクターの固まらなさが『全開ガール』の視聴率低迷の一因であった。これに対して長期連載漫画の『らんま1/2』ではキャラクターは固まっており、『全開ガール』で一歩踏み出した新垣がラブコメを徹底することで、新境地を開く可能性がある。
水をかぶるとパンダになる乱馬の父・玄馬には古田新太。着ぐるみなしで顔に特殊メイクをするだけでパンダとして通用しそうな好キャストである。
あかねの片思いの相手の小乃東風には谷原章介。谷原はNHK BS時代劇『テンペスト』で主人公の一途な思いを寄せる好青年を演じた。ところが、小乃東風は好きな人の前では言動がおかしくなってしまう人物である。爽やかな谷原のイメージをどこまで崩せるか注目である。
驚きの配役は天道家の長女・かすみ役の長谷川京子である。天童家では母親が他界しているため、かすみが母親的存在であるが、19歳である。30代の長谷川京子では年齢的なギャップが大きい。同じ高橋留美子作品『めぞん一刻』も実写ドラマでは当初22歳の音無響子を放送時30歳の伊東美咲が演じていた。高橋作品の大人びた女性には同年代の女優では演じきれない奥深さがある。(林田力)
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